今日も旅天気
 
アジア大好き。共産党は大嫌い。
 



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カイラスへ4

 最初のゴンパ(チベット仏教のお寺)に着いたのは、十二時だった。二時間の予定を一時間近く越えている。これでは本日の宿泊予定である二番目のゴンパには今日中に着くことができないのではないか、そうなると全ての予定が狂ってしまう。お金も余分にかかってしまうだろう。
どうしましょうか、と相談し、五人の中でも特に疲れていた若い二人がポーターを雇うことになった。たまたま会った中国語の達者なチベット人運転手に通訳を頼み、本来なら一人一日八十元のポーター代を、彼女たち二人分の荷物は軽いので、二人百元でお願いすることになった。
 通訳をしてくれた運転手にお礼をしようとしたら、
「わしには必要ない。それより彼のポーターが気に入ったら、少しでもいい、チップをやってくれないか」
「もちろんそのつもりだよ」
「では、たのむ」
「本当、色々にありがとう」
 歩き出してしばらくすると雹を含む雨が降り出した。川の下流から吹き上げてくるような雨だ。背中とザックに当るだけなので特に辛くも、冷たくもない。こんな雨なら怖くないぞ、と思っていたが、翌日、とても辛い目に遭うことになる。
 途中にあるお茶テントで三時の休憩をとっていると日本の団体ツアーの人たちとここでも会った。彼らとは途中の町などで何回も顔を会わせている。とても高額のツアー料金を払って参加しているようだ。すでに数人が高山病で倒れたと言っていた。幸い、私たち五人はだれも高山病の症状は出ていない。
 ここからの登りがきつかった。足は鉛のように重く、肺はフイゴのようにぜいぜいと空気を吸い込み、吐き出す。数歩歩いては休み、もっと休みたいとの体の欲求を意思の力でねじ伏せる。今回が山歩き初めての二人にとっては素晴らしい経験になっただろう。意思の力の素晴らしさがわかったと思う。もう駄目だと思っても意思の力で足を前に出す。一歩、又一歩。
もう二度といや、と思っているに違いないけど。
 泊まる予定だったゴンパは橋が落ちて行けないので、テント村で宿泊することになった。一ベッド三十元。食事は専用のテントがあり。そこでお湯がもらえたので、ラサで買い込んでいたカップラーメンを食べる。けっこう美味い。最近の中国製のラーメンも美味くなったと思う。



2006年12月25日(月)01:43 | トラックバック(0) | コメント(0) | レジャー・旅行 | 管理

香港にて

 少し前、今年の春節の頃、私ら夫婦は香港に居た。ゲストハウスにじっとしていても仕方が無い。でも特に観光名所を見ることの無い私ら夫婦は香港の町を歩くことが多かった。
 その時、前を六十歳くらいの日本人夫婦が歩いていた。その時の会話。
「なあ、吉野家で牛丼があったぞ。食べに行こう」
旦那が言う。その頃、日本の吉野家ではまだ牛丼が復活していなかった。
「何で香港まで来て吉野屋に行かなあかんねん」
嫁さんがかなり怒りながらご返事。旦那さんは黙り込んでしまった。
 後ろを歩いてた私達、
「うーん、どちらの気持ちもよくわかる」



2006年12月22日(金)01:14 | トラックバック(0) | コメント(0) | レジャー・旅行 | 管理

カイラスへ3

 ラサからシュガツェまでは道路がいい。快適だ。始めの宿で日本人に会う。彼は日本の旅行会社のツアーに一人で参加して、私達とほぼ同じコースを行くようだ。一人で車やガイドを頼むと高くつくのだろうなあ。
さて、我々の予定ではカイラスに行く前にエベレストを見に行こう、やっぱり世界最高峰は見たい。昔、ネパール側から見たことはある。だから中国側からも見たい。
 しかし結果、天気は悪くどこからもその姿を拝むことはできなかった。山々は雲に覆われている。仕方がない、本来の目的であるカイラスを目指し、車に座り、食べて寝る数日間を過ごす。お尻が痛い数日間でもある。ただ風景が美しいので飽きることは無かった。日本では絶対に見ることができない景色だ。
 三日が過ぎた。座って美しい景色に歓声をあげ、写真を撮るだけの時間は終わった。カイラス山の麓の町に着いたのだ。カイラスコルラが明日から始まる。
チャータの車は時間的な余裕がない。本当はもっとゆっくりしたかったのだが、翌日にコルラを始めた。私たち夫婦にとっては二回目のコルラとなる。
 聖カイラス山、仏教、ヒンズー教、ボン教の聖地であるこの山の周囲、約五十キロを数日かけて歩く。
 河口慧海和尚も歩いている、最高海抜五千七百メートル、その時、空気の濃度は海抜ゼロの約半分だ。
 少々体がだるい。出発地のタルチェンという町がすでに海抜四千六百メートルもある。
 しかし歩き始めはけっこう快適だった。冗談も言えるような普通な山歩きだ。町外れから数頭の犬がどこまでも付いてくる。何か食べ物でももらえるとでも思っているのだろうか。うーん、コルラ(チベット仏教は時計回りで聖地を巡礼する)が終わって余っていたら魚肉ソーセージでもやるのだけど。   
 小さなタルチョのある峠を超える。チベット人は峠に旗をたなびかせるのが好きなようだ。実際は経典の書いてある布で、風が仏法を世界に広めてくれると信じられている。
 川筋に降りると、最近の雨のためか川が増水して、道がかなり悪い。足元が悪いと自分のペースで歩けないのでかなり疲れる。ほとんどに人はこの先まで車で来るので道はほとんど無い。



2006年12月22日(金)01:04 | トラックバック(0) | コメント(0) | レジャー・旅行 | 管理

カイラスへ2

 チベット冒険の旅、いいなあ、俺も行ってみたい、かっこいい、写真やビデオを見た一部の友人達は言う。でも実際はけっこう激しく揺れる車の中でお尻と腰の痛みを我慢し、高山病になったらやだなあ、と怯える、あまりかっこよくない旅である。その上に山歩きが加わると、うまくも無い食べ物を我慢しながら食べ、泥まみれで、風雨、雹や強風に耐え、上り坂で筋肉は悲鳴を上げる。下りは膝ががくがくし、薄い空気に酸欠の金魚のようの口をぱくぱくする。やっぱり絶対かっこよくない。
 時に考える。俺たちはなぜここに居るのだろう。家でソファーに座り、ビールでも片手にテレビでチベットの特集番組でも見ていれば、楽にそこに行った気になれるかもしれないのに。

 テレビのドキュメンタリーではトイレの話がほとんど出てこない。これが一番の問題なのになあ、少なくとも女性にとっては。
 チベットの高地には木はほとんど生えてない。草は生えているが羊やヤクが食べてしまっている。平原には隠れる段差もほとんど無い。結局、数十センチの段差を利用して用を足さねばならない。その段差もない時は「すいません。おしっこをするので向こうを向いていてくれませんか」と同行者に頼むことになる。そしてたとえトイレがあっても外でしゃがんだほうがましのような激しく汚いトイレも多い。というかそれが普通だけどね。
 まあ。とにかく旅は始まった。大枚をはたいているのだからできるだけ楽しく過ごそう。食事は値段を気にせず本当においしそうなものだけを選ぶようにした。はじめはニーマにチベットでの美味しそうなメニューを聞こうとしたのだが、彼は中華料理をよく知らないと言う。本当のところは中国のことなど知りたくないようだ。チベット人なら当然なのだろうか。  
始めてチベットに来た六年前、中国人が好きなものは絶対に食べないというチベット人に会ったことがある。彼は豚肉に箸をつけなかった。



2006年12月16日(土)01:15 | トラックバック(0) | コメント(0) | レジャー・旅行 | 管理

カイラスへ1

 私たちの車を追い越した四輪駆動車は水溜りの泥水を激しく撒き散らし、一瞬、フロントガラスが泥水に覆われ、前方が見えなくなった。
運転手のニーマは軽く舌打ちしてつぶやいた。
「この悪路をこんな激しいスピードで走ったら、いずれ事故を起こすか、車が壊れてしまうよ。日本の車でもね」
 確かに故障車は多かった。ただ故障は私達の車でもあったので、これは仕方ないだろうと思う。道は確かに悪いのだ。しかし安全運転することはできる。
実際、帰り道、自損事故でフロントガラスにでも突っ込んだのだろうか、
「誰か病院に連れて行ってくれ」と叫んでいる雲南ナンバーの車から這い出してきた、血だらけのゆがんだ顔の中国人の若者を見た時は、かなりびびった。ニーマの安全運転は私たちにはありがたかった。
 私たちの乗っている車ももちろん四輪駆動車だ。荒々しい自然の残るこの西チベットでは本当に信頼できる車しか走ることができない。この地ではトヨタのランドクルーザーが九割以上を占めている。同じ車種ばかりだと、故障の時に部品の供給が比較的容易なことも理由の一つだろうが、もちろんそれだけではない。古い話だがリビアのカダフィ大佐も絶賛した荒地での性能のよさ、だろう。中国や韓国の車はチベットの大地を走る力はまだ無いようだ。
 ニーマはチベット人だ。年齢は聞かなかった。特に理由は無い。たぶん四十代だろうと思って聞かなかった。でも実際はもっと年をとっているように見える。チベットの激しい自然が彼を実際より年上に見せているのかもしれない。推測だから本当のところはわからないけどね。他のツアー運転手は三十歳前後の者が多い。そして若さゆえにアクセルを踏む足に力が入り、事故を起すのは世界共通だ。
 私たち日本人は五人、私と女房、ラサで待ち合わせをした友人、そしてラサのホテルの張り紙で集まった若い女性二人。男一人と女四人の即席チーム、カイラス目指して行動を共にすることになった。
 ニーマは年相応に少しお腹の出たチベッタンだ。中国語が少し話せる。口数が少なく、行動で示すタイプのようだ。



2006年12月15日(金)01:17 | トラックバック(0) | コメント(0) | レジャー・旅行 | 管理


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