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2006年6月16日を表示

死ぬかと思った時

皆さん、雷は嫌いですか。まあ、普通の人は嫌いでしょうね。私は昔、岩登りをしていたことがあります。岩登りの最中に雷に遭うことがあります。逃げることができない、ただ岩にしがみついて祈るだけの本当に怖い瞬間です。体にカラビナ等の金属の道具をつけています。この道具類、どこか遠くに放り投げたいと思うのですが、もちろんそんな事はできません。そんなことをしたら雷の終わった後に登攀ができなくなって完全に命を失ってしまいます。この恐ろしい時間が過ぎ去るのを待つだけです。
 私は幸いにそれほど恐ろしい場面に出くわしたことは無いのですが、出会った人によるとすぐ近くの岩壁に雷が落ちて岩壁が震え、金属が青白く光ったそうです。何も無い岩壁に落ちて、なぜ金属のかたまりの登攀者に落ちないのか不思議だと言っていました。
「案外落ちないものだね」
 彼は笑いながら言いました。でもよく考えて見ればもし彼に雷が落ちていれば、ここにいるわけがない。はるか西方浄土にいるわけですから、案外落ちないかどうかはわからないわけです。

 私が雷で最も怖い思いをしたのはもう二十年近く前のグランドキャニオンでのことです。
 グランドキャニオンを下りコロラド川まで往復した時のことです。グランドキャニオンは渓谷の上にキャンプ場があります。そのキャンプ場は簡単に泊まることができます。予約は要りません。今はどうかは知りません。コロラド川の川岸にあるキャンプ場は予約が必要で、キャンプ場以外の場所でのキャンプは禁止されています。ただ日帰りならコロラド川まで行くことが可能です。
 でもここのハイキングは普通の山登りとは違い、後半に苦痛が待っています。山登りなら前半がんばれば、後半は急な下りで膝を痛めたり、滑って怪我をしたりしないように注意深く歩けば楽なものです。しかし渓谷の上から出発するハイキングは(登山ではないなあ)前半に比べ後半に苦痛が来るのであります。もちろんロバの背中に乗っての楽なツアーも用意されているのですが、そんなお金はありません。
 ガイドブックによればコロラド川までの往復に八時間かかるとありました。渓谷を見下ろす展望台(もちろん自然の物)に寄れば十二時間かかるらしい。でもせっかくだから両方行きたい。
 朝の六時に出発の予定で、出発したのは七時、下りなのでぐんぐん距離を伸ばし、九時半頃にコロラド川に着き、大休止を取りました。休んでいる時に女性の公園レインジャーがここには泊まれませんと言いにきました。今日中に上のキャンプ地に戻るつもりだと言うとにっこりと笑って手を振って歩み去りました。
 展望台にも寄って、さあ後は登るだけ、と渓谷のかなり平たい部分を歩いていた時、西のほうから真っ黒な雲がすごい勢いで近づいてきました。あ、夕立かなと思って雨具を出して準備をしていると5分ほどで豪雨になりました。もちろん雷の激しい音も聞こえます。谷と言っても日本と違い規模が大きいので本当に広くて隠れるところがほとんどありません。
 困ったなあ、と歩いているとすぐ右、たぶん数十メートル離れた何も無い場所に雷が落ちたのです。閃光と同時に石が弾け飛ぶのが見え、同時に耳がおかしくなるような轟音。あっ、と思ったら次は左に落ちた。次に落ちるのは絶対に俺の上だ、と思い、死に物狂いで走り、近くに偶然あった岩陰に身を隠し、もっていた金属類を10メートルほど離れた場所に放り投げた。怖いのなんの。この怖さは経験しないとわからないよ、本当。
 もちろん、雨と雷はすぐに東に行ってしまいました。



2006年6月16日(金)00:46 | トラックバック(0) | コメント(0) | レジャー・旅行 | 管理


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