東チベット3 |
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| バスは六時四十分に出発した。朝早いほうが、乗客は皆緊張して朝寝坊する者は居ないようだ。薄暗かった朝の風景は輝きだした。しかし、景色を楽しむ者は少なく、ほとんどは眠っている。車掌まで空いた座席で眠っているではないか。他の取り巻き連中も眠ってしまった。かわいそうに運転手は話し相手も無くさびしげに運転している。 風景は昨夜とあまり変わらず、いかにもチベットらしい景色だ。ネパールでもラダックでも四川でも、チベット人に住んでいる所は似ている。ただこのあたりのチベット家屋は伝統的な平屋根ではなく、並トタンを使った切妻屋根や寄棟屋根の家屋が多い。雨が多いのだろうか。 バスは順調に走り、途中で北京からの旅行者を拾った。拾った場所は湖が広がり、その奥に雪山が見える美しい所だ。カナダのロッキー山脈に似ている。カナダのほうがもっと規模が大きい。 北京から来た旅行者は生意気にもニコンのデジタル一眼レフカメラを持っている。彼女は私の前、バスのエンジンカバーの上に大股を広げて座り、写真を撮りだした。私は彼女が邪魔で写真を撮ることができない。でも人のことは気にしない中国人、こちらのことは全く気にせず写真を撮り続けている。天気も悪いし、ガラス越しに撮ってもいい写真は撮れないので、私は写真をあきらめた。 運転手、顔は怖そうなのだが、とても親切だ。彼女がいい写真が撮れるように数回車を停めてやった。 昼前に波蜜に着いた。このあたりはチベットのスイスと呼ばれているらしい。確かに巣晴らし風景だが、ネパールやパキスタンには規模で負けるなあ。残念。スイスは行ったことが無いので比較できません。ただ波蜜の町は絶対にスイスより汚いのは間違いない。ここで昼食、牛肉面をいただく。六元なり。 波蜜の町を出てからもしばらくは同じような景色が続いた。道も舗装されていて快適だ。道はどんどん下っていく。標高二千メートルくらいで河に突き当たった。ここで乗客は橋を歩いて渡った。しかしそれほど弱そうな橋には見えなかった。 この橋を渡ってからしばらくはとても細い川沿いの道を走る。崖がせりだし、未舗装で所々道が崩れている。雨の時は走りたくない道だ。雨が降ってなくても背中にじっとりと汗をかいた。 一時間ほどでその道を抜け、舗装された安全な道になった。ぐんぐん高度を上げ、四千五百の峠を越え、下ってしばらく走り道を曲がった途端、目の前にビル群が立ち並んでいる。こんな僻地になぜ。町の名は林芝。近づいて見るとほとんどのビルはまだ建設中で、建設を終わったビルも人影が少ない。西部大開発のお金がこんな所に使われているのだろう。箱物を作りたがるのは日本も中国のお役人も同じのようだ。だいたい観光以外まともな産業も無いこの場所にビルを作っても誰が入居できるのだろうか。 まだ六時過ぎなのに運転手は、今日はここまでと宣言した。乗客の一人がまだ明るいのでもっと先に進もうと言うと、「俺の目が限界だ」と運転手。見ると彼の両目は真っ赤に充血していた。 宿代五十元、トイレ、シャワー付き。ただしお湯は出ない。部屋はまあ清潔。登記をしようとしたらその必要は無いと言われた。外国人だとわかっているのかな。 食事は宿の隣でとることになった。ビールを頼むと隣の商店で買え、とのこと。久しぶりのビールが原価で飲める。食事はとても量が多く、ご飯を食べることができなかった。味は良。 翌日の出発は七時、六時に起きるので十時頃に寝ることにした。疲れているのと久しぶりのビールですぐに寝入ってしまった。 翌日七時、遅れてくる人はいつも決まっている。昼食休憩の時、トイレ休憩の時、必ず遅れてくるのは波蜜から乗り込んできた四人組の上海人、遅れても少しも悪びれることもなく、態度はいつも傲慢だ。中国中で嫌われているのがよくわかる。 林芝からラサまで道は完全に舗装されている。車が急に多くなった。観光のバスや四輪駆動車以外は材木を積んだ車が異様に多い。道のあちらこちらで材木の検査をする場所がある。不法伐採が多いのだろう。 検問があったが、ここでも運転手が書類を見せたら問題なく通過。公安は外国人の取締りより材木の取締りのほうに忙しいようだ。 ラサの手前で五千超の峠がある。運転手は親切で写真を撮れ、と車を停めてくれた。峠の標識の前で記念撮影をしているツアー客らしい中国人。後ろに待っている人が大勢いるのに気にせず構図を決めている。思わず言ってしまった。「快点」 雪が降ってきたので車に退散。ここでも相変わらず上海人はなかなか戻ってこない。 峠を下った四時過ぎ、突然後ろに座っていたチベット人たちが騒ぎ出した。「ポタラ」「ポタラ」と。見ると小さくポタラ宮殿が見える。 長かった四日の旅は終わった。
でもこの先、二週間以上かかる聖カイラス山への旅が待っている。
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2006年7月28日(金)16:07 | トラックバック(0) | コメント(3) | 旅行中 | 管理
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1: 良いな、それ。
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| >彼女がいい写真が撮れるように数回車を停めてやった。
ワシのだったら彼女とツーショットで写真撮ったと思うよ。 ニコンのデジイチ仲間ってことで仲良くしようぜ、なんちゃって(^^ノ
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by ijuin | 2006年7月29日(土)13:00
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2: 北京人
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| 一緒に写真に撮ってほしいような女性ではなかったのです。残念ながら。
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by 管理人 | 2006年7月30日(日)18:32
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3: 北京人
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| 一緒に写真に撮ってほしいような女性ではなかったのです。残念ながら。
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by 管理人 | 2006年7月30日(日)18:32
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